【よくある質問】私の持っているSandnerってどんな楽器ですか?(ドイツ楽器の歴史)

国際楽器社では入門用の楽器としてドイツ製の弦楽器をお勧めしています。

毎年、数百本のバイオリンをお求めいただきますが、なかでも3つのSandner(ザンドナー)ブランドが価格も手頃で、お選びになる方が多いようです。

お求めになったお客様から・・・
“フランツ・ザンドナーとワルター・ザンドナーは親戚ですか?”
と訊かれます。

やっぱり愛着ある楽器のルーツって皆さん知りたいようですね。
各楽器の製品情報はほかのページでご紹介するとして、少し長くなりますがこの機会にドイツの楽器製作の歴史をざーっとご説明します。(写真:19世紀後半のマルクノキルヘンの製作風景)

【ザンドナーはチェコ出身】
ワルターザンドナー・フランツザンドナーともチェコのシェーンバッハで約100年前に創業しました。

えっ?チェコ出身?まず、びっくりされるかもしれません。じつは現在のドイツギルド(分業)製作のバイオリンメーカーは、チェコのシェーンバッハ出身がほとんどです。

シェーンバッハはドイツバイオリンの名産地・マルクノキルヘン(Markneukirchen)と町が隣接しており、この地域一帯は”ボヘミア地方”と呼ばれ、この地域はドイツ語が公用語として使用されていたので楽器製作者は普段から行き来していました。同じ村にはKarl Hofner(カールヘフナー)Roderich Paesold(ローデリヒ ペゾルト)Egidius Doerfler(ドォルフラー)などの楽器・弓メーカーがいました。

写真:マルクノキルヘン・シェーンバッハはなだらかな丘陵

この地域の楽器製作の特徴といえばギルド=家内制手工業です。各家で楽器のパーツ(表板・裏板・ネック)を分業製作して組み上げて、ニス塗りしていくことで、製作スピードが向上するだけでなく個人製作の楽器よりも格段にコストが抑えられ、世界中に爆発的に売れていきました。
隣町のマルクノキルヘンにはロート(Roth)、プレッチナー(Pfretzhner)、ハンミッヒ(Hammig)ファミリー等が弦楽器を製作していました。
写真:マルクノキルヘンとシェーンバッハ(現在のLUBY)は隣町 XXX印が現在のドイツとチェコの国境

【親戚関係?】
さて”ザンドナーは親戚なのか?”ということですが、互いのザンドナーさんに直接訊いてみました。

答え:ワルターとフランツは親戚関係ではないです。
ザンドナーSandnerというのはこの地域に非常に多い名前です。弦楽器メーカーにもほかにアイリオス・ザンドナー(Ailios Sandner)アントン・ザンドナー(Anton Sandner)等もいます。

【第二次世界大戦でMittenwaldに引越】
19世紀末ごろからギルド(分業製作)がこの地域で盛んでしたが、1945年シェーンバッハは”社会主義国”となってしまいます。
当時からバイオリンは”輸出産業”であったので、生活のため、自由経済をもとめた楽器メーカーたちはもう一つのドイツバイオリン発祥の地・Mittenwald(ミッテンヴァルト)に集団移民します。

(写真:ドイツアルプスの山中の町Mittenwaldはドイツバイオリンの故郷)

【文化の違いに再び引越】
ミッテンヴァルトは1600年代マティアス・クロッツの時代から続く弦楽器製作の町で、イタリアのクレモナと並んで”バイオリン発祥の町”といわれています。
ドイツアルプスで穫れる木材や製作に必要な工具も揃っており、楽器製作者にとって”天国”のような町なのですが、シェーンバッハから移民したザンドナーなど弦楽器メーカーにとってMittenwaldは非常に”住みにくい町”でした。

それはなぜか?

宗教の違いです。ミッテンヴァルトはカトリック教の町。税金・戸籍など生活に関わることすべてに教会の存在が欠かせません。人の集まりも教会だったので、プロテスタント教のザンドナーたちは町の生活に馴染めなかったようです。

そしてわずか8年のうちに2度目の引越(1950-53年)します。

ワルターザンドナーやヘフナーはバイエルン州のブーベンロイトへ

フランツザンドナーはフランクフルト空港近くのヘッセン州ナウハイムに工房を移します

もちろんこの2つの町はプロテスタントの宗派。

【現在は・・・】
紆余曲折あった2度の引越を経て65年、分業製作の弦楽器職人たちは互いに助け合って成長してきました。
ジャーマンバイオリンは高品質で安定した品質という世界的評価を勝ち取り、ライバルのフランス・ミルクール地方の楽器製作を凌駕するようになりました。

ブーベンロイトとナウハイム、そしてマルクノキルヘンは互いに繋がっており、材木の調達やニス塗装も共同で行っている場合もあります。
ワルターザンドナー#30の楽器とフランツザンドナー#801のニスのレシピはほぼ同じなのも興味深いところです。

~どうでしたか?
高校の世界史の授業を思い出すようなお話ですよね?
機会がありましたらこんなお話を少しづつ書いていきたいと思います